アルパカに乗って世界一周5日目

中国に無事に上陸して2日目、旅を始めてから5日目の夕方になって、
僕は東港市の屋台で焼きそばをズルズルと食べていた。
いわゆる肉蕎麦と言うようなもので、濃いめの味付けの餡かけの中に牛肉とチンゲン菜がタップリ入っている。
麺とよく絡んでとても美味しい。付け合わせの卵スープで最後の一口を流し込んで、フーと息を吐く。

駿馬公社との商談は1日目に無事終わった。もちろん、早々にアルパカは港の近くに隠して、
残る9頭の馬を納品しに行った。10頭の納品予定では無かったのかと聞かれはしたが、
片言の日本語が喋れるスタッフを介して、
壮大な中国の大地に降り立った途端にあまりに興奮した1頭が北西の方角にとてつもないスピードで走り去ってしまった。
慌てて車で追いかけたが、もう後姿は見えなくなってしまった。
間違いなく、ここの看板馬になっていたであろうに非常に惜しいことをしたと身振り手振りも交えて説明して、
上手くごまかすことが出来た。
商談が終わった瞬間に北の道路を駿馬公社の車が1台飛ばしていったところを見ると、僕の説明もなかなか堂に入っていたようである。

何はともあれ、これでようやく本格的に旅を始めることが出来る。
無料サービスの熱々のお茶をフーフーと冷まして飲んでから、改めて、机の上に地図と持ち物のリストを広げる。
まずこれから僕らは海岸線沿いにぐるりと南下して南京市を目指す。南京市までは約1700キロの道のりなので、
一日に50~70キロコンスタントに移動できたとして、1ヶ月程度かかる見込みだ。
改めてそう考えると、中国は広く、更に地球は信じられないほどに広いのだということを実感した。
僕らは部屋の中で地球儀を回しながら、世界を勝手に狭くしてしまうが、
実際に歩いてみると世界はどこまでも、ただただ広がっている。

アルパカは勝手にその辺の野草を食べてくれるので、食べ物の心配をしなくていいのは助かるが、
水についてはたっぷりと確保しなければならないし、僕はさすがにその辺の物をムシャムシャと食べるわけにもいかないので、
用意した30キロの荷物のほとんどは水と食料品になった。これでも現地確保を最優先として、
減らしに減らした量である。
あとはバックパックと一人用テント、寝袋、アルパカを夜につないでおくロープ。十徳ナイフとサバイバルナイフ各1本、ライター、レインコート、
ウィスキーのポケット瓶一本、懐中電灯、コンパス、タバコ1カートン、地図、葉巻12本、胃薬、痛み止め、消毒液、タオル、ゴルゴ13の漫画1冊を
用意した。

足りないものは現地で買い足していけばいいし、大抵のものは知恵と工夫でなんとかできるものである。

何気なしに見上げた空にきらりと光った一筋の箒星に僕は明日からの旅の無事と成功を祈った。(続く)

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